掲載:2010/1/15
浅川ダム住民監査請求で陳述人(15人)の一人として、意見を述べました。
松本市民で県議会議員の北山早苗です。最後の陳述なので、ダムの問題点を大局的な見地から述べます。
京都大学名誉教授の河川工学者・今本博健氏は、「ダムは“限定的な洪水による壊滅的でない被害の回避”に役立つ可能性があるだけで、平時は環境を破壊しつづける無用の長物である。本来、治水の使命は、いかなる大洪水が発生しようと壊滅的被害を回避することである。一定限度の洪水を対象にしていたのでは、この使命は果たされない。これからの治水は治水の使命を果たす原点に戻る必要がある」と述べています。
現在日本のダムは、想定洪水を机上で計算し、それを防ぐことを目的に造られます。これを限定的と言っているわけです。浅川でも、外水被害のなかった昭和61年の降雨パターンを引き延ばして数値を決め、ダム以外の方法ではこの数値を満たせないようにしてあります。だけど、こんな想定洪水が起きるのは100年に1度どころか、何百年、何千年に1度かもしれず、それはダムの寿命を遥かに超えています。そういう博打(バクチ)のようなことに数百億円も血税を使って造るのがダムだと、まず理解してください。
また、限定的な洪水用のダムですから、例えば、壊滅的な被害を引き起こしている、市街地に降るゲリラ豪雨や、山間部に降る想定を超える豪雨には役にたちません。浅川でも一番問題の内水被害には、役に立たないことは、ダムの宿命みたいなものなのです。
学者の今本先生がおっしゃっていることは、実は、住民も感じています。例えば、大雨で冠水した立体交差の道路で車から逃げ遅れた人が亡くなったとか、ダムがあったのに堤防が切れお年寄りが逃げ遅れて亡くなったとか、そういう話をニュースで聞くと、「国や県は、ダムさえ造れば、まるで水害からみんなが助かるかのように言っているけれど、本当は違うんじゃないの?」と、多くの国民・県民は、疑問を持っています。だからこそ、脱ダムを政策として打ち出した鳩山政権が選ばれたのです。
こんなダム建設に投入するお金の余裕が、県にも国にもあるのでしょうか?ないことは明らか、子どもにツケを回して造るのがダムです。借金だけではありません。「平時は環境を破壊しつづける」ダムは、環境面でも次世代に大きなツケを回すと言えましょう。浅川ダムはその典型です。
では、いかなる大洪水が発生しようと壊滅的被害を回避する治水の使命を果たすためには、どうすれば良いのでしょう。まずは、「造ること」に国からの補助があった従来の補助制度のあり方を見直し、堤防の補強や河川の維持管理に補助が貰えるようにすることです。
例えば、高瀬川では池田町側の昔の堤防決壊常習箇所付近で堤防の根元がえぐられていました。県に「何故放っておくの?」と聞いたら、「災害認定にならないため県単費用で直すしかないから、もっと壊れるまで待っている」と言うのです。
奈良井川水系の鎖川では河床がえぐられ護岸が壊れる心配があり、以前から6基の帯工を要望していますが、昨年からやっと1基分の予算がつきました。これも、堤防の維持にあたるため県単事業です。
堤防の補強のみならず、河川環境の維持管理は全て県単、国からの補助金はダムなど新規の大規模事業にしかつかない仕組みです。国が中止した松本市の大仏ダム計画があった奈良井川改良事務所の現場職員は、「こまめな維持管理さえ行っていれば、それほど大きな災害は起こらない」と言っていました。それには補助金制度の仕組みを変えないといけません。
次に、ちょうどこの日曜日の朝日新聞に掲載されていた東大名誉教授・高橋裕氏の論文にある“総合治水”です。これは、ハードな構造物ではなく、溢れることを認め、被害を最小限にすることを目的とする治水対策で、遊水池や、堤防の背後に高い道路で二線堤を設けたりする、明治以前の伝統的な考え方を使った対策です。他にもハザードマップや、氾濫しやすい地域の土地利用規制などソフト対策も組み合わせます。
今回の新政権によるダムの見直しは、ここに向かうでしょう。治水政策の大転換がなされようとしている大事な時期に、長野県で浅川ダム本体が着工されてしまったら、取り返しがつかず、愚かなことをしたと、後の世代に言われ、必ずや禍根を残します。
長野市長選のアンケートでも、62.3%の市民が「浅川ダムを見直すべき」と言っています。
よりよい河川を次世代に引き継ぐために、明治維新の廃藩置県を断行したときに匹敵する強い意志をもって、「脱ダム」「堤防補強」「実際に起きている水害への対策」に、貴重な税金が使われるよう、長野県からチェンジするべく、どうか監査委員のみなさまには勇気あるご判断をお願いし、陳述といたします。
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関連ニュース
《NHK》
◎浅川ダム住民監査請求で陳述
長野市に計画されている浅川ダムの建設をめぐり、地元住民などが治水効果はほとんどないとして税金を支出しないよう求める監査請求を行ったことを受けて13日、当事者の意見陳述が行われ、住民側が「河川管理を進めればダムは必要ない」などと訴えたのに対し、県側は「住民の安全を確保するために必要だ」と反論しました。
県が計画している浅川ダムの建設をめぐっては先月、地元住民など3400人あまりが「ダムを造っても治水効果はほとんどなく、建設に税金を使うことは地方自治法などに違反する」として、税金を支出しないよう求める住民監査請求を行っています。
《ABN》 ◎浅川ダム反対派が住民監査請求の意見陳述 [1月13日(水)] 県が建設に向け準備を進める長野市の浅川ダムについて、公費の支出差し止めを求め住民監査請求をした反対派が意見陳述し「ダムは必要ない」と主張しました。 意見陳述は監査請求の妥当性を判断するための手続きの一つで、浅川ダム建設に反対する15人が請求人として意見を述べました。 この中で、住民グループの代表・神戸今朝人さんは「しっかりとした河川管理を進めることで、災害の危険をなくすことができる」と述べました。 また、別の請求人は「浅川の基本高水は過大で、公費の支出は税金の無駄遣いだ」と指摘しました。 県監査委員会は意見陳述などを参考に、来月22日までに監査結果を出すことになります。










