掲載:2009/7/3
県営烏川渓谷緑地公園の指定管理者制度導入に反対討論
北山早苗です。第9号長野県都市公園条例の一部を改正する条例案に反対です。
県営烏川渓谷緑地公園は、平成14年に開園した水辺エリアと17年開園の森林エリアに分かれ、北アルプスの常念岳・蝶ヶ岳を源とする烏川渓流と、そこに生育する動植物などの多様な自然環境を保全し、活用することを目標とした公園です。
この方針に沿って、烏川公園は、市民と安曇野建設事務所の県職員が、公園づくりや維持管理について話し合い、特に森林エリアは、建物などの施設は極力造らず、市民会議の森林班や植物班メンバーなどの市民ボランティアと県が一緒に森づくりをしています。私も当初から市民会議のメンバーとして、公園を見つめてきました。
平成15年の国による管理委託制度廃止で、公園公社へ管理委託していた7つの県立公園は、県直営か指定管理に移行することになり、6公園は平成18年度から指定管理を導入しましたが、烏川公園はまだ整備中であり、また、他の6公園とは違って、市民と県が協働して森づくりをする特別な公園であるため、県が直営で管理運営することになっていました。
ところが、県は烏川公園の整備が終わったという理由で、指定管理導入を決め、市民に伝えたのが昨年10月末です。しかも、突然、市民会議の座長だけに伝えました。市民会議では、県のやり方があまりに性急すぎるとして、6月県議会に指定管理の条例改正を提案するのはやめて欲しいと何度も訴えましたが、県は方針を変えるつもりはなく、今回、提案がなされてしまいました。
このような、森の公園づくりにかかわっている市民の意向を無視した県の進め方の他にも、烏川公園の指定管理導入には、問題があります。
まず、県は公園整備は終わったと言っていますが、森づくりに終わりはありません。特に植林され放置されていた里山を県が買収し公園にした森林エリアは、間伐などがずっと必要で、整備の終了はありません。
次に、他の県営公園や県営施設と違い、指定管理者が収益をあげられる施設が烏川公園には全くありません。指定管理業者は県からの委託料のみで管理運営費を賄うため、収益をあげようとすれば、人件費を押さえることになりかねません。現在、県から1年契約で、しかも低賃金で雇用されているにもかかわらず、公園管理のほか、来園者への対応、学校単位で訪れる小中学生への自然インストラクターとして、献身的に尽くされている専門的知識を有した管理人の、採用や処遇が保障されるとは限りません。
更に、指定管理制度が始まって数年が経った今、この制度の問題点が浮き彫りになってきているのではないでしょうか。たとえば、指定管理の公募・非公募の基準が曖昧なこと、公募の選定委員会では県職員が多数、民間人が少数で、選定にあたっての情報公開が殆どなされていない等、不透明部分が多いことなどが挙げられます。入札制度は一般競争入札が当たり前になりつつありますが、指定管理者の選定については、指名競争入札とも言われかねない状況です。最終的には県が選考した指定管理者は、県議会の承認議決を経ますが、よほどの理由がなければ、議会としては反対しにくいのではないでしょうか。指定管理制度そのものについての検証がなされるべきです。
そもそも、指定管理にする意義は何なのでしょう。それぞれ県営施設の目的と市民にとってのベターが何なのかを考え、その実現のために、指定管理か、直営か、あるいは完全な民営化が良いのかという方法で、管理の形態を考えるべきではないでしょうか。今の県は、経費や職員の削減だけが目的、指定管理ありきで、導入しようとしているように思えてなりません。
平成19年3月に出された、県行財政改革プランの中で、指定管理者制度については、『民間等との協働の観点から他の手法も併せて検討する中で、例えば、指定管理者制度を新たに教育機関等へ導入することの検討や、県営住宅について、対象拡大の検討などを行い、可能な施設等については随時導入する。』と書かれていいるだけで、烏川公園には触れておらず、他の手法も含めたその後の検討の経過も明らかではなく、突然、指定管理導入の方針発表という唐突なやりかたには、大きな疑問があります。
もともと収益をあげられる施設がない烏川公園や、今回同時に提案されている、青年の家や少年自然の家のように、収益を上げることが目的ではない教育施設への指定管理制度の導入は、もっと丁寧に、慎重に検討されるべきです。
私は、5月に横浜市の舞岡公園を現地調査してきましたが、ここは、大変上手く指定管理を、公園の一部に取り入れていることがわかりました。
舞岡公園は、横浜戸塚区の住宅地の中に残された、田園や雑木林の風景が広がる自然公園で、谷戸(やと)という台地や丘陵に小さな谷が複雑に刻み込まれた、横浜の特徴的な地域がそのまま保全されています。さまざまな生き物がすみ、伝統的な農林業と自然とが共生している「里山の自然」が谷戸ですが、今の横浜では殆ど残っていません。
舞岡地区では、地元ボランティア市民が、この谷戸を守るための公園づくりを1983年ころに始め、1992年に横浜市営公園としてオープンし、今では約500の団体が活動しています。
開園前の10年間は、横浜市と市民団体が、雑木林の手入れや水田の復元、動植物調査などを行いながら、他に殆ど例のない公園の維持と管理に向けて少しずつ試行錯誤を重ねてきました。
そして、開園後の1993年に市民団体「舞岡公園を育む会」が発足し、横浜市から、公園の一部の管理運営委託を受け、94年には、田畑の作業の計画や指導が出来る人材を育成する舞岡公園谷戸学校がスタート、2000年には「育む会」から「小谷戸の里管理運営委員会」が発足しました。
その後、国による管理委託制度廃止で、横浜市は、これまでの市民活動を維持・サポートするために、そこに指定管理制度を導入することにし、小谷戸の里管理運営委員会が指定管理者に移行しました。
公園の目標は「昭和30年代の横浜の原風景を残す」ことで、開園前とその後の合わせて25年間の、市民と行政が一緒になって取組んで来た様々な工夫と知恵が活かされて、現在の市民による指定管理に至っているのです。
舞岡公園に比べ、長野県烏川渓谷緑地公園での市民と行政による森の公園づくりは、まだたったの5年です。それなのに、公園の全てを指定管理にして、公園管理から市民との協働まで業者にまかせてしまおうというのは、いくらなんでも、早すぎます。
私は、指定管理者制度そのものに反対ではありませんが、しかし、今後、指定管理を『県民のためのよき制度』として活用するためにも、ぜひ、県議会の皆様には、今回のような、県のやり方に歯止めをかけていただきたいのです。反対をお願いし、討論といたします。








