12月県議会 一般質問
6.
2008
あおぞらの北山早苗です。
〈県立病院の地方独立行政法人化について〉
県が検討している県立病院の地方独立行政法人化は、県民にとって良いことなのでしょうか。そこで、病院事業局長にお尋ねします。
県は、独法化の狙いとして、創意工夫の出来る経営、弾力的な組織・人事・財務運営などを挙げています。
しかし一方で、疑問や現場職員の不安の声が聞こえてきます。例えば、
- 職員は全体の奉仕者という立場で県立病院が果たす役割を考えている。非公務員化で意識の差が出て来ないか。
- 一部にインセンティブを与える給与体系では、他の職員が普通に働いていても給与が下げられる可能性はないか。
- 採算性がより重視され、不採算部門が切り捨てられる可能性があり、地域医療が守られるのか。
- 独法化が素晴らしいというのなら、なぜ、国立病院機構長野病院のお産の受け入れ中止が検討されるような事態になるのか。
- 公立病院が民間と同じになれば、セーフティネットとしての役割が維持できるか。
- 独法化の目的は、経営健全化の名の元に職員の人件費削減と、自治体本体から切り離すことで定員管理の枠の外に置くことではないか。それで人員が確保ができるのか。
これらの疑問や不安の声にまず、お答えください。また、それを踏まえた上で、あらためて、県として独法化の理由をご説明ください。
(病院事業局長)順次お答えする。
1、自治体病院以外の一般病院でも地域医療を支えるため職員が日夜奮闘している。医療に携わる人間は、公務員、非公務員の前に、医療人としての強い使命感を持って日々の厳しい業務にあたっている。公務員でなければ地域医療を守れないということではなく、大切なことは、患者や地域社会のために高い志を持って働くこと。
2、非公務員型の地方独立行政法人の給与は、民間と同様に労働関係法規の運用を受け、就業規則や労使交渉の結果に基づき法人が定める。一方的に給与が下げられることはないし、独法化した先行事例でも現段階で給与が引き下げられたとは聞いていない。
3、地域に必要な医療サービスの提供に支障が出ないようにすることは県立病院として必要。むしろ、医療機能を維持向上できるような制度の検討を行っていきたい。
4、国立長野病院の問題は独法化によって生じた問題ではないと認識している。産科医不足は全国的問題。
5、独法化は県立病院を民営化しようとするものではない。県が100%出資して法人を設立し、地域に必要な医療サービス提供を継続させるもの。法人が提供する医療サービスの質は県が議会の議決を経て目標を決め法人へ指示することとされており、法人化によって県立病院の担う役割が後退しないよう検討を進める。
6、経営形態の見直しの目的の一つは、現状よりも人材の確保を行い易くすること。独法化すれば定数の束縛から解放され、適時適切な人材確保が容易になる。
行政機構審議会からは、「地域医療への役割と経営責任が明確で経営の自由度が高い地方独立行政法人が最もメリットが大きい」という答申を貰っている。これに沿った形で独法化に向けて検討を進めている。
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県立病院の経営状況について、病院事業局長にお尋ねします。
へき地医療や高度・特殊医療、不採算分野の医療を担ってきた自治体病院は殆どが赤字経営で、国からの交付税措置を含む自治体からの繰入金で賄われています。
県から県立5病院への他会計繰入金の総額はいくらでしょうか。また、交付税の基準財政需要額に算入されている金額と実際に交付税措置されている額からして、県の負担はおよそいくらでしょうか。
また、県立病院の経営状況を考える上で、県は、県立病院の損益分岐点を把握しているのでしょうか。病院経営では、固定費が多く、経費削減やシステムの効率化などでは収益が伸びにくく、一方で、損益分岐点を境に患者数によって損益変化が大きく左右されます。
そこで、5病院のそれぞれの損益分岐点を把握しているのか、そして、それを各病院と共有して、経営改善のための協議をしているのでしょうか。
(病院事業局長)行政経費や不採算医療等に充てる経費、施設整備に伴う企業債償還元金の財源に充てる経費を合わせ、平成19年度実績で総額53億2874万1千円となっている。このうち、地方交付税として措置されているものは17億円余。
毎月の経理状況を取りまとめ、病院に情報提供する等、経営改善のための努力を行っているが、地方公営企業の制約から、契約方法一つとっても自由に出来ず、改善になかなか結びついていない状況だ。
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損益分岐点を把握して、経営にあたることは、経営者の常識です。患者数と収益・費用との関係を示す損益分岐点は常に見ていく必要があります。把握してください。特に須坂病院では、周辺との病院の競争があるため、大事です。
次に、私なりに、県立5病院の経営状況を調べてみました。
他県との比較の必要から、総務省のホームページに公開されている平成18年度のデータをもとにしています。
まずそれぞれの病院の経営状況をみてみました。
(水色の)経常収支比率は100%以上が望ましいといわれ、木曾とこども病院が100を超えていますが、阿南は91.6と低い値です。
(黄色の)医業収支比率は95%以上が望ましいとされていますが、木曾病院の101.4のみが上回っており、駒ヶ根・阿南・こどもの3病院は6〜7割台と低い値です。駒ヶ根は精神科、阿南は療養や精神科の病床が半数を占めており、こども病院も福祉的な要素の大きい病院で、他会計繰入金など医業外の収入が多いためです。
そのため、駒ヶ根・阿南・こどもの3病院の他会計繰入金の対経常収益比率(グリーンのところ)は高い値になっており、県の負担も大きと言えます。
(ピンクの)職員給与費は、医業収益費に対して55%を超えないことが望ましいといわれています。しかし、精神科病床や療養病床の場合は、駒ヶ根111.3、阿南80.6と高い値、こども病院も医師一人あたりの入院と外来の患者数は2.6人と少なく、当然人件費比率は高くなっています。一般病床を中心に経営している須坂と木曾の人件費比率は適当な範囲内にあるようです。
(下から2段目の)病床利用率は、木曾の86.9%を除き、いずれも6〜7割台と低い利用率です。民間病院では9割を切ると倒産寸前といわれるだけに、大きな課題です。
全体的にみて、木曾と須坂病院はきびしい医療情勢の中でも、健全な経営につとめていることがうかがえます。木曾病院は他にかわる病院がないこともあって、県立病院らしく、地域に存在感を示しています。
須坂病院の病床利用率79.8%は低めですが、平均在院日数が他に比べてやや短いことでカバーしているようです。しかし、近隣病院との競合もあり、公立であることの意義付けをはっきりさせておく必要があります。
駒ヶ根病院も経常収支比率は悪いといえず、健闘しています。ただ、医師一人一日あたりの入院患者数も27.3人と高く、医師の負担の大きさが気になります。
阿南病院の場合は、経営状況は良いとはいえませんが、一般病床もあり、医師一人一日あたりの外来患者数が23.5人と、他の県立病院に比べて格段に多く、地域の拠点病院としての役割も担っています。
こども病院は、福祉的性格が強いのですが、経常収支比率は高く、他県のこども病院と比べて遜色ない経営状況といえます。
次に、病院会計全体で、人口規模の似た他の4県と比較してみました。
安全性をみる指標、自己資本比率、固定資産対長期資本比率、流動化比率や、棒グラフの収益性をみる指標、経常収支比率、医業収支比率からみると、やや借金体質ではあるものの、長野県の病院会計はおおむね健全な財政状況であるようです。
病床100床あたりの職員数(青い棒)は、長野県は91.2人で、他県と比べて1割少ない人数で頑張っています。医師一人1日あたりの患者数(緑と赤の棒)も他県と比べ多く、その割に医業収益対職員給与費(茶の棒)は68.3で、他県と比べて人件費比率が高いとは言えません。
他会計繰入金対経常収支比率(グレーの棒)も、長野県が特別多いとは言えません。
このように、長野県の県立病院の経営は、他県と比べても遜色はなく、頑張っているといえるのではないでしょうか。
そこで、病院事業局長にお尋ねします。
私の素人なりの経営分析でしたが、局長の認識と食い違う点がありましたら、ご指摘ください。県立であっても現場は懸命に経営努力されていると思えますが、それなのに、独法化する意義は何処にあるのでしょうか。
(病院事業局長)県立病院の経営状況についてまとめてもらい、ありがとうございました。
各病院の社会的環境や歴史的背景、職員構成、一般会計の繰り出し基準等、単年度のみの分析で論じることは難しく、馴染まない。
一つ指摘させてもらうなら、こども病院は高度小児医療等を提供する医療機関であり、福祉的性格が強いという指摘はあたらない。
長野県の県立病院経営は他県に比べても遜色ないとの指摘どおり、経営改善のため各病院長を中心に様々努力している。
しかし、現行制度では人事上の制約が大きく、医師・看護師が確保できないことや、単年度会計制度であること等の理由で、経営の自由度が小さく、経営状況は悪化している。
診療報酬改定や医療ニーズの変化に素早く対応し、収入の確保と機会損失の削減を図り、経営改善を行うためには、人材養成・確保や柔軟性ある予算・会計制度の導入が不可欠、そのために独法化は極めて有効な手段と考える。
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知事にお尋ねしますが、独法化しないと病院改革が出来ないと決めつけているところに現場の不満があるのではないでしょうか。独法化ありきで進めると、頑張っていることを否定するような形になってしまいます。現場の意向を反映できるような形にしていかないと、禍根が残ると思いますがいかがでしょう。
(村井知事)行政機構審議会では、県立病院の現地調査を行い、各病院から出された諸問題の解決には、どの経営形態が最も適切なのかという検討を頂いた。病院の関係者からいろいろ話を聞く中では、努力だけでは解決できない制度的な制約もある。病院事業局に対して、病院職員の声を良く聞きながら丁寧に検討を進めるように指示をしている。
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知事に再度伺います。
独法化を率先して進めた府県はどこも財政の厳しい県です。長野県でも、もし独法化の本音が、県の財政事情からして53億円の繰入金額を削減したいというところにあるとすれば、フレキシブルな勤務や給与制度というのは、諸刃の刃で、給与の削減や労働強化も自由にできるようになり、職員の不安はここにあります。
創意工夫の出来る経営や財務運営というのも、サービス費用を自由に値上することができるようになり、県民にとっても諸刃の刃です。そもそも、公立病院は経営が難しい地域や分野において役割を果たすために設置されるものです。不採算部門を切り捨てるのでは本末転倒です。
長野県の県立病院の経営が他県と比べても遜色なく、福祉的な役割、地域的な役割を担い頑張っていることを評価し、独法化ありきで早急に進めるのではなく、県民にとって良い医療を提供するにはどうすべきか、そこから深めていただきたいと思います。最後にもう一度知事のご所見を伺って質問を終わります。
(村井知事)県立病院というのは非常に思い役割を担っている。医療は県政の最重要課題であると就任以来申している。県立病院の経営形態の見直しはこれからも県民にとってより良い医療を提供していくために行うものと考える。
そのためには医師をはじめ医療スタッフの確保を図っていくことが大変大きな課題だ。現在の地方公営企業法の一部適用では大変制約が大きくて限界がある。地方独立行政法人というのは、今の形に比べて経営の自由度が広がり、遥かに適切だと感じている。
現在病院事業局を中心に病院職員の意見を聞きながら検討を進めている。今日の病院を取り巻く厳しい状況を考えると、急いで作業を進める必要がある。






